手掌多汗症、足蹠(足の裏)多汗症に効果がある、交感神経遮断術
多汗症とは、汗をつかさどる交感神経が働き過ぎてしまうために起こるものです。ということは、この交感神経の働きをなくせば、汗は止まるということになります。その原理を利用して、交感神経そのものを切ったり焼いたりして切断する方法が交感神経遮断術です。
また、切断せずに交感神経にアルコールなどの薬剤を注入し、汗を出す指令を止める方法が交感神経節ブロックです。
この方法は、手掌多汗症、足蹠(足の裏)多汗症に効果があります。足の裏の多汗症には腰部交感神経節ブロックが一般的です。交感神経遮断術に関しては手のひらに効果のある腔鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)、足の裏に効果のある腰部交感神経遮断術があります。
ただ腰部交感神経遮断術に関しては、近くに大動脈などの大切な血管があるので、非常に危険性のある手術となるでしょう。
交感神経遮断術の概要
部位 | 手のひら |
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手術時間 | 約30分 |
手術回数 | 1回 |
効果 | 70~80%の汗を軽減。 |
持続期間・再発 | 半永久的。稀に再発あり(1~5%)。 |
傷跡 | 小さく目立たない。 |
術中の痛み。 | 全身麻酔のため、痛みはなし。 |
術後の痛み | チクチクとした痛み(1週間程度)。 |
副作用 | 代償性発汗(90%以上の確率)、体温が高くなる、気胸、一過性の不整脈など。 |
入院 | 1泊2日(日帰り可能なところもあり)。 |
通院 | 様子を見るために通院が必要な場合も。 |
脱毛効果 | なし |
わきがへの効果 | 個人差あり(わき汗が減り、臭いが軽減する人もいれば、代償性発汗で悪化する人も)。 |
術後の生活 | 翌日から普段の生活が可能。 |
費用 | 保険適用で10万円程度。 |
腰部交感神経節ブロックの概要
部位 | 足の裏 |
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手術時間 | 約1時間 |
手術回数 | 1回 |
効果 | 90%以上の汗を解消。 |
持続期間・再発 | 約5年 |
傷跡 | ほとんどなし。 |
術中の痛み。 | 針を刺す痛み、鎮痛剤を点滴しながら行うクリニックもあり。 |
術後の痛み | なし |
副作用 | 代償性発汗、射精障害。 |
入院 | 1泊2日程度(左右なら2回必要)。 |
通院 | 必要なし。 |
脱毛効果 | なし |
わきがへの効果 | なし |
術後の生活 | 術後3~5時間は安静にすること。 |
費用 | 保険適用で5,700円+入院費用。 |
交感神経遮断術・腰部交感神経節ブロックはこんな方にオススメ
この手術は、代償性発汗のリスクが大きいため、本来はおすすめできない治療法です。
ただ、重度の手掌多汗症で足蹠(足の裏)多汗症など、仕事や私生活に多大な問題が生じているというのであれば考える余地はあるでしょう。
なにせ、わきの下の多汗症とは異なり、効果のある治療法はボトックス注射しかないのが現状です。
しかも肝心のボトックス注射でも効果は長くて1年しか持ちません。この部位の多汗症効果を長期間持続させたい、費用面も抑えたいというのであれば、交感神経遮断術・腰部交感神経節ブロックしかない、という現状なのです。
交感神経遮断術・腰部交感神経節ブロックをオススメしたい方
・再発したくない(交感神経遮断術のみ)
交感神経遮断術・腰部交感神経節ブロックはオススメできない方
・保険に加入していない
・入院できない
・軽度の手掌多汗症、足蹠(足の裏)多汗症の方、腋窩(わきの下)多汗症の方
・近くにあるクリニックのスキルが低い(特に腰部交感神経遮断術を希望の方)
代償性発汗のリスクを説明してくれるクリニックを選ぶ
交感神経遮断術・腰部交感神経節ブロックの最大のデメリットは、やはり代償性発汗です。実際にこれらの手術をした方のコメントでは、代償性発汗により、これまでよりも悩みが大きくなった、という方も少なくないです。
しかも代償性発汗について個人差はあるものの高い確率で発生しますから、代償性発汗が起こらないほうに期待する、というわけにはいきません。まず、代償性発汗は起こるものと覚悟して手術を受けたほうがいいでしょう。